No.27
2024/12/30
補助金採択率が減少した原因と採択するためのポイント!
こんにちは!名古屋、愛知、岐阜にて経営コンサルティング、補助金コンサルティング、組織コンサルティングを行う株式会社マツリブの中村です!
令和6年度を振り返ると、これまで安定的に利用されてきた経済産業省の補助金制度に変化がありました。具体的には、「事業再構築補助金」「ものづくり補助金」「持続化補助金」などの主要な補助金における採択率が減少しているという現象です。
今回は各補助金の令和6年の全体的な採択率の変化と、マツリブが感じた例年との違いを解説します。
目次
事業再構築補助金の2024年採択率と例年との変化について
まずは事業再構築補助金の最近のデータを見てみましょう。
応募件数 | 採択数 | 採択率 | |
2022年 | 第5回 | 21,035件 | 46.1% |
第6回 | 15,340件 | 50.0% | |
第7回 | 15,132件 | 51.2% | |
2023年 | 第8回 | 12,591件 | 51.3% |
第9回 | 9,369件 | 45.5% | |
第10回 | 10,821件 | 48.1% | |
第11回 | 9,207件 | 26.5% | |
2024年 | 第12回 | 7,664件 | 26.5% |
(出展:事業再構築補助金 公式ホームページ 採択結果 https://jigyou-saikouchiku.go.jp/result.html)
第10回までの採択率は50%を前後していましたが、第11回から約26.5%と大きく減少しました。
減少した要因として、令和5年10月11日に開催された政府の財政制度分科会にて事業再構築補助金に対し指摘があったことが挙げられます。
(出展:財務省 財政制度分科会 令和5年10月11日開催https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/20231011zaiseia.html)
具体的な指摘は3点ありました。
1点目が採択された計画の中に強みが異なるはずの複数の事業者がフルーツサンド販売店の展開という全く同内容の計画により採択されていた。とのことです。
事業計画書が似ることはあっても全くの同内容になることはありえません。
同じ事業計画書の代筆業者が関わっている可能性があります。代筆は禁止されていますので、それを見抜けなかったことを指摘されていると思われます。
2点目が自販機や無人販売店の急増の要因になっている。というもので、3点目が第10回公募の採択案件約5200件には、「ゴルフ」や「エステ」、「サウナ」に関するものが多数含まれている。とのことです。
こちらは、事業再構築補助金が原因で競合が増加してしまい、脅威の発生が起きてしまいます。
事業者の事業再構築を阻害する要因を作っているのではないかという事を指摘していると思います。
以上から審査体制の見直しの必要性が指摘されました。
こうした一時的な流行などの安易な事業計画や、全く同内容の計画の採択に対する採択の抑止が求められました。
こうした経緯を受けて、第11回公募の審査基準をより厳格にする見直しが行われ、それが採択率の大幅な低下につながったと考えられます。
事業再構築補助金はコロナウイルスによる悪影響を受けている企業を支援するための補助金なので、コロナが終息しつつある中で事業再構築補助金の役割は終わりつつあるという指摘もありました。
2025年度の事業再構築はどうなるのか?
2024年11月29日に経済産業省より各事業の予算の概要発表がありました。
その予算に事業再構築補助金は入っていませんでした。
つまり追加の予算を取得することができなかったという事です。
そして、中小企業庁が2024年12月6日に公開された中小企業・小規模事業者等関連の補正予算のポイントについて情報を公開しました。その中に新事業への進出にかかる支援の推進(新事業進出補助金)が新設されていました。既存基金の活用とかいてあるため、事業再構築補助金の後継の補助金であることが予想できます。内容に関しても事業再構築補助金と似た補助金になるのではないでしょうか。
ものづくり補助金の2024年採択率と例年との変化について
(応募締切ベース)
ものづくり補助金も最近のデータを見てみましょう。
応募件数 | 採択件数 | 採択率 | |||
2022年度 | 第9回 | 一般型 | 3,552件 | 2,223件 | 62.6% |
グローバル展開型 | 61件 | 24件 | 39.3% | ||
第10回 | 一般型 | 4,224件 | 2,584件 | 61.2% | |
グローバル展開型 | 70件 | 28件 | 40.0% | ||
第11回 | 一般型 | 4,668件 | 2,786件 | 59.7% | |
グローバル展開型 | 76件 | 31件 | 40.8% | ||
第12回 | 一般型 | 3,200件 | 1,885件 | 58.9% | |
グローバル展開型 | 56件 | 22件 | 39.3% | ||
第13回 | 一般型 | 3,261件 | 1,903件 | 58.4% | |
グローバル展開型 | 61件 | 24件 | 39.3% | ||
2023年度 | 第14回 | 4,865件 | 2,470件 | 50.8% | |
第15回 | 5,694件 | 2,861件 | 50.2% | ||
第16回 | 5,608件 | 2,738件 | 48.8% | ||
2024年度 | 第17回 | 629件 | 185件 | 29.4% | |
第18回 | 5,777件 | 2,070件 | 35.8% |
(出展:ものづくり補助金公式ホームページ https://portal.monodukuri-hojo.jp/saitaku.html)
この表から明らかなのは、事業再構築同様に2024年から採択率が減少しているという事実です。特に第17回では採択率が約29.4%と急落しました。第18回では少し回復しましたが採択率は約35.8%と2023年に比べてかなり厳しい状況です。
補助金の認知度が高まり、応募件数が増加していることも採択率低下の要因の一つです。2024年の第18回公募では応募件数が5,777件と過去最多を記録しました。
しかし採択件数は2,070件、採択率は約35.8%と、2022年の高採択率と比較して明らかに競争が激化しています。
2025年度のものづくり補助金はどうなるのか?
2024年11月29日に経済産業省より各事業の予算の概要発表がありました。
その予算案にものづくり補助金が入っていました。2024年12月17日に補正予算が成立したため、2025年に公募されることは間違いないでしょう
(出展:経済産業省 令和6年度補正予算案の事業概要(PR資料)https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2024/hosei/pdf/r6_pr.pdf)
更に2024年12月6日に中小企業・小規模事業者等関連の補正予算のポイントについて情報を公開しました。
ものづくり補助金については下記の通りです。
・最低賃金近傍の事業者に対する支援として、補助率を1/2→2/3に引き上げ
・製品、サービス高付加価値化枠について、21人以上の中小企業を対象に補助上限を引き上げ
・賃上げ動向を踏まえ、賃上げ要件等の見直し このことから前回のものづくり補助金より手厚い補助が見込めます。
(出展:中小企業庁 令和6年度補正予算案 中小企業・小規模事業者等関連ポイント https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r7/r6_hosei_point.pdf)
持続化補助金の2024年採択率と例年との変化について
持続化補助金は、小規模事業者や中小企業が販路拡大や事業の成長を図るための重要な支援策です。しかし、2024年の採択率は大幅に低下し、多くの事業者にとって予想外の結果となりました。
ここでは、データを基にその変化と背景について解説します。
応募件数 | 採択数 | 採択率 | ||
2022年度 | 第7回 | 9,339件 | 6,517件 | 69.8% |
第8回 | 11,279件 | 7,098件 | 62.9% | |
第9回 | 11,467件 | 7,344件 | 64.0% | |
第10回 | 9,844件 | 6,248件 | 63.4% | |
2023年度 | 第11回 | 11,030件 | 6,498件 | 58.9% |
第12回 | 13,373件 | 7,438件 | 55.6% | |
第13回 | 15,308件 | 8,729件 | 57.0% | |
第14回 | 13,597件 | 8,497件 | 62.5% | |
2024年度 | 第15回 | 13,336件 | 5,580件 | 41.8% |
第16回 | 7,371件 | 2,741件 | 37.2% |
(出展:中小企業庁公式ホームページ https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/shokibo/old_info.html)
2023年までは60%前後を維持していた採択率が、2024年には第15回で約41.8%、第16回ではさらに低下して約37.2%となっています。この急激な低下は、過去数年には見られなかった動きです。 事務局から第15回公募申請は「公募要領に記載する補助事業者の要件に合致しない」や「申請書類の不備」等により採択できなかったケースが数多くありました。と発表がありました。
原因は第15回からは申請方法大きく変更になったことが予想できます。
以前は申請書類をPDFで貼り付けるだけで良かったところをブログ形式で申請入力していく方針に変更になりました。
このような申請方法の変更により入力不備件数が増えたことが想像できます。
2025年度の持続か補助金はどうなるのか?
2024年11月29日に経済産業省より各事業の予算の概要発表がありました。
その予算案に持続化補助金が入っていました。2024年12月17日に補正予算が成立したため、2025年に公募されることは間違いないでしょう。
(出展:経済産業省 令和6年度補正予算案の事業概要(PR資料) https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2024/hosei/pdf/r6_pr.pdf)
(出展:財務省 令和6年度予算 補正予算https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2024/fy2024.html)
更に2024年12月6日に中小企業・小規模事業者等関連の補正予算のポイントについて情報を公開しました。
持続化補助金については下記の通りです。
・賃上げ動向を踏まえ、賃上げ要件等の見直し このことから前回より多くの応募件数が見込めます。
採択率減少の背景と理由について
この補助金採択率の低下には、背景と理由があります。
(※ここからは全体的に共通する採択率が減少した原因の説明をお願いします。)
審査基準の厳格化
採択率低下の大きな理由は、全体的に審査基準が厳しくなっていることです。
前述の通り事業再構築補助金では、厳しい指摘が入りました。
それによって審査基準が厳格化し採択率が減少してしまいました。同時期にものづくり補助金、持続化補助金も採択率の減少が見られました。
同時期ということから、ものづくり補助金、持続化補助金にも審査基準の厳格化したことが予想できます。
では審査基準が厳格化して後の補助金の印象を記載しておきます。
事業再構築補助金:かなり思い切った事業でないと採択が難しくなった。
事業再構築補助金では、かなり思い切った事業でないと採択が難しくなった印象があります。
下図をご覧ください。
Aの事業が、金型事業者が機械商社に成る。という思い切った事業だとします。
Bの事業が、金型事業者が、今までできなかったプラスチック用金型へ参入する。という現業の延長寄りの思い切った事業だとします。
Cの事業が、金型事業者が今までできなかったサイズの切削加工技術を取得する。という現業の延長の事業だとします。
第10回以前であればAとBは思い切った事業に含まれるようなテーマですが、第11回以降は同じ事業計画でもBは現業の延長と捉えられてしまうという印象があります。
新設された新事業進出補助金でも同様に、現業の延長では採択が難しくなると予想しています。
ものづくり補助金:DX化・AIなどを活用した計画が採択される印象
ものづくり補助金はDX化・AIなどを活用した計画がより採択されやすい傾向にあるという印象があります。ものづくり補助金HPで採択されたテーマを見てみてみると、DX化AIの活用といったものが見られます。検索をしてみたところ全体2070件に対してDX89件、AI140件と多くの事業者がDX、AIに取り組んでいることがわかります。
持続化補助金:ITを活用した計画が採択される印象
持続化補助金はITを活用した計画がより採択されやすい傾向にあるという印象があります。
持続化補助金もHPで採択されたテーマを見てみることができます。
SNS、HP、ECサイトなどのITの活用といったものが多く見られます。
ものづくり補助金のようにDX化・AIの活用を事業計画に盛り込みことも有効ではありますが、前述の通り審査基準の厳格化されているため安易なDX化・AIの活用は見透かされてしまう可能性があるため注意が必要です。
補助金の効果
採択率が落ちた原因に、中小企業への支援のあり方について議論したことが影響しているかもしれません。2023年11月12日の行政改革推進本部 秋の年次公開検証では、事業再構築補助金を巡る議論で「市場の自立性とか、公平性、経営の自立性を損なうおそれなど、メリットよりデメリットが大きい場合がある」などの補助金に否定的な意見がありました。
また、補助金による小規模事業者への業績への影響として、補助金の受給自体より事業計画策定が効果的であると示しています。
このような補助金の必要性を問う意見が出ており、それが採択率に影響されている可能性があります。
(出展:財務省 財政制度分科会(令和6年11月1日開催)資料一覧https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/20241101zaiseia.html)
2025年 補助金を採択するためのポイント
<ポイント1 自社が申請できる補助金をリサーチする>
まずは自社が申請できる補助金をリサーチしておきましょう。
マツリブでは、相談を受けた際にお客様の要望とマッチした補助金を提案させていただいておりますが、すべてのコンサル会社がそうであるわけではないので、自社で申請できる補助金をリサーチすることは大切です。
リサーチ方法は「J-Net21」の支援情報ヘッドラインを活用することです。
企業経営や創業に役に立つ国や都道府県の支援情報がまとめて検索することができます。
特に都道府県の支援情報は事業再構築補助金等と比べて目立たないです。
そのため見落としがちになりますので、このサイトで自社にマッチした補助金をリサーチしましょう。
もう一つの方法が商工会議所や商工会や産業振興センターに聞くことです。
管轄地域の事業者に向けて様々な情報を提供しているため、補助金情報に詳しく相談に乗ってくれます。また、商工会の会員であれば定期的に補助金のセミナーが開催されることがあるので、そこで情報収集するのも効率が良いです。
このように自社で補助金情報をリサーチできれば、コンサル会社へスムーズに相談ができ、自分で手続きできそうな補助金を見つけることができれば、費用の削減にもなります。
<ポイント2 事前に自社の経営状態・課題を確認する>
事業再構築補助金、ものづくり補助金をはじめ補助金を申請する場合は、自社の経営課題を具体的に把握しておかなければいけません。
なぜなら補助金申請には自社分析が必須だからです。
自社分析を行い、経営課題を明確にして課題を達成できるように設備を購入するというストーリーを書くのが事業計画書です。では、どうやって経営課題を把握するかというと、SWOT分析を使ってください。SWOT分析は企業や事業の現状や課題を把握するためのフレームワークで、経営戦略の立案やマーケティングの意思決定などに活用されます。
このSWOT分析ですが、事業再構築補助金、ものづくり補助金等で推奨されている企業分析方法です。
SWOT分析についてJ-Netがわかりやすくまとめていましたので、こちらを参考してください。
https://j-net21.smrj.go.jp/special/mangadewakaru/01.html
<ポイント3 経営・業務に注力するためにプロに依頼するのも手です>
補助金申請を考えていても、業務・経営と両立しながら申請書に着手するのは正直難しいケースがあります。時間がなく中途半端になってしまうことも。
補助金サポートのプロに依頼する方が一番の近道かもしれません。
申請サポートを依頼する業者選びのポイントは2つあります。
1点目は販売会社から紹介していただいた補助金コンサルタントは、信頼に足る可能性が高いです。商品を売りたい商社は、実績と信頼が高い優良コンサルタントを紹介し、トラブルになる可能性の高い悪質な補助金コンサルタントを紹介することはほぼありません。
2点目は認定経営革新等支援機関(認定支援機関)から選びましょう。
認定支援機関とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関(税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関、民間コンサル等)です。
認定支援機関はインターネットで検索することができるので、検討している補助金コンサルタントが認定支援機関であれば安心して任せてもよいでしょう。